「愛嬌のある人だなぁ」と社長を見ていて、ふと思う。仕事を終えて帰る時、まだ残っている社長に挨拶すると、電話しながら笑顔で手を振ってくれたりする。先に社長が帰る時は、新米の僕に「失礼します」といって頭を下げていってくれたりもする。そんな社長にインタビューを敢行した。

 まず、簡単に会社の変遷を聞かせてもらえますか?

 僕らの会社の前身はアパレル関係でね。まだ、このビルに移る前、同じ押上の小さな雑居ビルの一室で、Tシャツやカットソーの下請け生産を始めた。しばらくして、荒井君が入ってきた頃から、タレントショップブームに乗っかって、タレントグッズやアーティストのコンサートグッズの企画、製作をやったり、サーフブランドなんかも手がけはじめたんだ。
 その後、広告代理店との付き合いが始まって、販促物やノベルティなどを作り始めた。この頃はまだ、国内で全て生産していたんだけど、徐々に価格競争が激しくなってきてね、そこで発想の転換をして、ストラップ類の資材を各色取り揃えて、大量に在庫を作っておいて、他社が3週間かかるところを、2週間の短納期で勝負したんだ。
 これが受けて、最終的にあのドイツのサッカーワールドカップ向けのネックストラップを受注することになった。他を含めると当時、ネックストラップだけでも2年間で200万本を作って納めることができたんだよ。
 その後さらなる価格競争に備えて、ネックストラップや、携帯ストラップを今のような中国で生産する体制に切り替えたんだ。

 そのころが中国開拓時代なんですね?

 そう。僕と荒井君で右も左も分からない中国大陸で、通訳もなしに、ただ旅行代理店の知り合いの中国人に頼んで書いてもらった文章の紙を頼りに、身振り手振りで工場と折衝したんだよ。無謀だよなぁ、全く。

 確かに凄い行動力ですね。

 そのあたりからお陰様で、何社かの中国工場と提携するようになって、実際に資本投下したり、設備投資したりするようになって行ったんだ。本当に当時関わってくれた人には全員に感謝してる。彼らのお陰で今に繋がってるからね。

 ネックストラップって当時そんなに出たんですか、今じゃ考えにくい数字ですよね。

 なんでもそうだけど、必ず栄枯盛衰はあるんだ。携帯クリーナーだってその後、2年くらいで300万個作ったけど、こないだ請けたクリーナーなんか確か300個だったもんなぁ。

 安保さんが電車で納品に行ったヤツですね。確かに桁違いですね。ところで、今のこのビルに移ったのはいつ頃なんですか?

 クリーナー作ってた頃だね。その後「エコパックカイロ」「携帯のぞきみ防止シート」の順かな。カイロは2年で300万個は作った大ヒット商品になった。

 工場が完成しましたが、それについてお聞かせ下さい。

 今言った流れでね、携帯ストラップの需要に変わってエコバックやエコトートなんかの縫製品の引合いがこのところ増えて来ていて、今まで契約していた縫製工場と本格的に資本提携して、大幅な改修工事と設備投資をして、生産キャパを拡大したのが、昨年稼働を始めて、今回の展示会はこの工場の縫製品を目玉にしようと思ってる。まあ、大川企画の変遷はこんなとこかな。

 社長はよく「愛」を口にしますが、社長のおっしゃる「愛」とはどういった意味でしょうか?

 僕の言う「愛」は「心」のことだね。仕事でも言動でも「心」のこもってないのは「情熱」を感じないし、人を感動させられないって事なんだ。感動がないところに次なる展開はみこめない訳で、言い換えれば「愛」は次につながる原動力になりうるって事なんだね。だから「愛」があればエネルギーの連鎖でいろんな事が次々に起こりうるんだよ。

 なるほど、では大川企画のプロダクトには全て「愛」がこもっているんですね。

 そうありたいし、常に努力してる。実際さっき言ったように今にこうして繋がっているからね。

 座右の銘なんかはあるんですか?

 そんなものはないけどね。「感謝の気持」と「情熱」かな。でも結局すべて「愛」というコトバに集約されてるんじゃないかな。

 社員に何を求めますか?

 「前進」する姿勢だね。常に前を見て行動するって事かな。自分自身できちんと考えてね。そこで、本来なら結果が全てなんだろうけど、僕の場合は、その過程もちゃんと評価するようにしてる。さっきから言うように過程こそ「愛」が大事だからね。悩むくらいなら、すぐ相談すればいいんだから、社員は心置きなく「前進」して欲しいと思う。次にある壁を壊すのは僕じゃなくて、社員自身であるべきだと思うね。

 かくゆう社長は、仕事の原動力は意外にも、「家族の笑顔」だと言う。

 そうなんだ。仕事を会社のためになんて思わなくていいし、そんなことをこちらが強要すべきことでもない。僕自身、家族が少しでも満足できる生活ができればって思って頑張ってるんだよ。

 今後の会社の方針は?

 もちろん自分も含めてなんだけど、うちの会社の人間はまだまだ半人前だと思うんだよ。みんなが集まってやっと一人前になれる。事実、今までは町工場みたいな会社だったと思うよ。でも、いつまでも「花火師」のままではいけないと感じてるんだよ。ノベルティのような「一発モノ」ではなく、OEMのような商材にも挑戦していく時期に来ているんだと思う。もちろん、今のお客様も大事にしながら、今の路線もありつつだけどね。いつの時代も、「上手くて」「早くて」「安い」というのは僕達に求められる永遠の潜在的なニーズなんだ。黙ってたって営業は成り立たない。時代の空気を読んで「鼻」を効かせて、何が今必要とされているのかを嗅ぎとる事が必要なんじゃないかな。

 わかりました。社長、今日はほんとうにありがとうございました。
代表取締役社長
大 川  博
1962年生まれ/東京都在住
東京都出身
獅子座/ A型
会社設立:1994年




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